1/02/2009

The Lives of Others/善き人のためのソナタ


人間という生き物には感情があって、どんな人にも、ある絵や映像を見た瞬間、音楽を聴いた瞬間、ハッとして胸の中でなにかが沸き上がるような経験をしたことがあると思う。芸術は、どことなく曖昧な、かたちがあるようでないような、触れないもののような、現実的というよりは抽象的なものだとおもう。そのくせ、ピーンと人の心に入ってくることがあるのは、それを創る人の感情が作品に現れているからであって、人間はそういうものを感じることが好きなんだとおもう。
自分がすべき任務がわかっていながらも、この厳格な主人公が盗聴相手の奏でる音楽や、語られる思想に見入られてしまうのは、彼にも感情があって、どこか自分の心の奥底にある思いを、まったく知らない人たちの口から外に出されることで、本当は嬉しくてたまらなかったんじゃないだろうか。